少しできるようになった頃
少し外科医としての力量がつき出していた頃の話である。
大きなトラブルもなく、
難しい症例もいくつか経験し、
周囲からも任せられる場面が増えていた。
自分でも、手応えを感じていた。
だからこそ、無茶をしていた。
外来も、全部診ていた。
雑多な主訴の初診。
その大半は手術を必要としない疾患。
検診異常での受診。
その中に紛れて、
手術の紹介患者や、
緊急手術を要する病態の患者さんもいる。
並行して再診。
薬だけを取りに来る人。
癌術後のフォローアップ。
抗がん剤治療中の患者。
検査結果を聞きに来た人。
全部、自分で診ていた。
自分が診るべきだと思っていた。
任せられる力量があるのだから、
引き受けるのが当然だと。
外来が終われば病棟。
病棟が落ち着けば手術。
手術が終われば説明。
説明が終われば書類。
一日は、途切れなく続いていた。
忙しいことに疑問はなかった。
それが“外科医として成長している証拠”だと
どこかで思っていたからだ。
でも今振り返ると、
あの頃の僕は、
現場を回しているつもりで、
実は視野を狭くしていた。
全部自分で抱えることと、
現場を良くすることは、
同じではなかった。
そのことに気づくのは、
もう少し後の話になる。

コメント